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着物屋はごり押しの文化

着物屋はごり押しの文化

着物屋をはじめて13年、業界の「ごり押し文化」に逆らって生きてきました。

今でこそなんとか毎日楽しくお店に立っていますが、振り返れば「着物を売るなら押せ!押して押して押しまくれ!」が常識の業界で、あえてその逆を行くチャレンジをしてきました。

「ごり押しをやめたら着物なんて売れないよ」というのはどこの展示会でも感じていました。 いやいや、そんな時代遅れの方法で本当にいいのか?と思い続けた13年間。おかげで、「今はちょっと変わったお店」と言われていると聞いたこともあります。

着物屋業界の「ごり押し文化」との対決

着物業界に足を踏み入れた頃、いちばん驚いたのは、店の雰囲気じゃなくて「ごり押し」の文化でした。 言い換えると「来たら帰さないぞ」っていうっ感じ。すでに高価で敷居が高いイメージがあるのに、それに加えて「これ買わなきゃダメです!」とか「今決めないと損します!」みたいな営業トーク。

おいおい、どこのギリギリ商談やってんだよ?って感じです。 お客さんも、たまたま見に来たはいいものの、いつの間にか多額の契約書にサインして帰らざるを得ない、そんな光景が普通。

僕にはどうしてもこのスタイルは嫌いだった。ごり押しって、最初は売り上げを出せるかもしれないけど、結局はお客さんに嫌がられちゃうんじゃないか?って思ったんです。そもそも、着物って文化的で美しいもので、もっと誇りを持って売れるはずなんですよ。なのに、無理やり売るって、なんか違うよな、と。だから、あえて私は「売り込まない呉服屋」を目指すことにしました。言うは易し、実行は…難しかったですけどね。

ごり押ししない販売スタイルの挑戦

「売り込まないスタイルでどうやって着物を売るんですか?」って、いろんな人に聞かれました。私の答えはシンプル、「ちゃんと魅力を伝える」。もちろん、セールストークみたいな無機質な説明じゃなくて、例えば、「この柄は江戸時代から伝わる伝統的なデザインで、夏に着るとすごく涼しげですよ」みたいな話をして、お客さんがその着物をイメージできるようにすること。

そして何より大切なのは、「買わなくてもいいよ」、というスタンス。だって、着物は素敵なものだから、じっくり考えてもらったほうが満足度も高いはず。だから、お客さんが来店したら「今日は見てるだけでもいいんですから、どうぞごゆっくり」と、ゆったりとした時間を提供するようにしました。 度が過ぎて「接客されなかったわ」なんてことも。。。

もちろん最初は、「売り上げどうすんだよ?」って自分でも不安でしたけどね。

実は意外なことに、無理に売り込まないことで逆にお客さんが増えてきたんです。最初は「この店、全然押してこないけど、大丈夫なの?」って思ったかもしれないお客さんも、じっくり着物の良さを知ってもらうことで、また来店してくれるようになったんですよ。お店の雰囲気が落ち着いていて、リラックスできるって評判になったりして、リピーターが増えていきました。

店舗運営の工夫―「カジュアル着物屋」を目指して

とはいえ、ただ売り込まないだけではなく、若い世代にも着物を身近に感じてもらえるような工夫も大事でした。なので、SNSを使って「こんな感じで普段着としても着物を楽しめますよ」とか、「カフェに行くならこんなコーディネートがオシャレ」なんていう投稿を始めました。そうすると、「着物って、結婚式とか成人式だけじゃなくて、普段も着られるんだ!」と興味を持ってくれる人が少しずつ増えてきました。

さらに、ワークショップや着付け教室を定期的に開いて、着物に慣れてもらう機会を作りました。もちろん、着物を売るためじゃなくて、「まずは触ってみて、楽しんでみてください」って感じです。これが意外と好評で、、、

「着物に興味あるけど、買うのはまだちょっと…」っていう人にも、気軽に足を運んでもらえるような場所になってきました。

そして、価格もできるだけ考えました。よく「着物は高い!」って言われますが、それは流通によることが多いんです。 「流通を省いた小売り」を知ってもらうように。

頑張れているのか?

そんなこんなで、13年前の「ごり押ししない」方針は、結果として上手くいったのか?正直、最初は不安でいっぱいでしたが、今では少し知名度もついてきました(と思っています)。 お客様との距離感を大事にしながら、無理に売り込むことなく、着物を選んでもらうというスタイルが定着してきたんですね。

特に最近は、リピーターのお客様が増えて、口伝えで新しいお客さんも来るようになりました。これがまさに、私が思い描いていたお店。最初に売り込んで終わりじゃなく、何度もお店に来てもらい、少しずつ着物に親しんでもらう。着物って本来、そういう時間をかけて愛されるものだと思ってるんです。

未来へ向けての挑戦は続く

もちろん、これからも課題は山積みです。時代が変わる中で、伝統文化を守りつつ、どうやって新しい世代に伝えていくか。簡単なことではありません。でも、私はこの「ごり押ししないスタイル」で、着物の良さをもっと多くの人に伝えていけると信じています。

今後は、さらにカジュアルな着物の使い方を提案したり、イベントで着物を楽しむ機会を増やして、着物がもっと日常に溶け込むような文化を作り上げたいと思っています。

変わり者の着物屋として、これからもごり押しなしで勝負し続けますので、皆さん、気が向いたらぜひ覗きに来てください!

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