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小屋にもぐりたがる5年生

小屋にもぐりたがる5年生

やる気は大切で  それさえあればなんでもできると思う なんか猪木さんみたい

ビジネスマンは格好つけて「モチベーション」なんて言葉をよく使っていますが、これを使いはじめたのはたぶん自分ではないかと小室さんが言っていました  小室哲哉さんね

少し前では証拠という意味でエビデンスが流行ってたな リソースとかリスケとか その時々で横文字が出てくる  なんだそれ 僕はあまり知らないけれど、格好つけるより伝わらなきゃ意味ないよね

「やる気があれば何でもできる」って言えるのはとても格好良いと思う  僕もその通りだと信じている  本気でやりたいと思ったら大概はできるんじゃないか 

そういえば昔こんなことがあった

小学5年生だったと思う

日曜日の午後、公園で友達と遊んでいたら、同世代の知らない2人組がいて、なぜか言い合いになった  喧嘩ではないけど

その公園の端っこには古く朽ちかけた小屋があって「その下を通れるか?」 という話で言い合いになった

(ほんと子供は不思議だなぁ) 

相手のひとりの小柄なやつは「できるよ できると思えばできるんだ」と言って、上着を脱ぎだした 

「頑張ったらできるかもしれない」と当時の僕も内心思ったけど、否定派として友達と一緒に言い合いしていたので、表向きはできない派を取り繕った

でも今考えれば、小屋は風や雨でびくともしないように作られていたはずだし、小学生の力ではなんともならないのが普通だ

でも、難しいことに挑戦するという彼を心のどこかで応援していた  

結果、彼はやらなかった

彼があきらめたんではなく、僕らが止めた

「やめとけ できないって」 と知らない子だったし、自分たち否定派の意見を通したかったわけでもなかったけど、止めにはいった  それに彼も折れた感じだった

多分、最後は和解のような終わりだったと思う

あの時、4人で別の遊びをしたら仲良くなれたのに と今は思うけど  僕らはきっとシャイだったんだろう

彼は大人になって、きっとどんな困難にもへこたれずに立ち向かう、いい男になっていたのではないだろうか  絶対無理だけど、会ってみたいな  これは探偵ナイトスクープ案件だと思う  彼とは友達になりたいな

僕の人生のなかでも「絶対に」ということがあった

まだ20代前半の頃、僕は肉屋にいた  賑やかな雰囲気が楽しそうで入った会社だったけど、実際とは違っていて特にやる気があったわけでも目標があったわけでもなく、同じフロアーにかわいい子がいるなぁ~ みたいなのがモチベーションだった(百貨店のテナントだったので)

仕事のやりがいとか、給与をあげたいとか、出世したいとかは全くなく、せいぜい「できない奴」と思われないようにしよう くらいな  適当にやろうって感じ  この時の「適当」は適度な感じという意味ですよ

そんな時に事件が起きた  肉を整理する作業をしていたときのこと  

男性の仕事には接客以上に肉の整理もあった

肉は問屋からある程度の塊で入荷してくるので、その脂や筋を手作業で落とし、料理に適したようにカットしていく  すき焼き用とか焼肉用とかステーキとか

僕はその時に豚肉を担当していた  

おそらくロースの部分だったと思う

ごみ箱から僕が整理して捨てる部分の肉を拾った上司が「この脂に赤身がついてるぞ こんな切り方してたらダメだ」 と怒られた

これは僕のミスだった  たしかに赤身は売る場所だ  ほとんどが量り売りだから、売れる部分をそいだら利益が減ってしまう  それを業界では歩留りと言っていた 

僕が悪いのは重々わかっていた  けど  怒られたことに気分を害した

僕は人に怒られるのが嫌いだった

その上司も虫の居所が悪かったらしく、口調がきつかった

普段から怒られることがあまりなかったこともあって、僕はもうやる気を完全になくした

それからというもの上司への反応は明らかに悪くなっていく

毎朝、通勤が億劫になり、働きたくなくて、逃げ出したくて毎日の昼休憩では転職先を探していた  百貨店の決まりで、「休憩時間であっても制服では人目につくところに出てはいけない」というものがあったので、中通りの自販機の横のくぼんだが転職探し場所だった  そこは出入りする業者の車が停まるようなところで、一般の人の往来はほとんどない道だったのでぎりぎりOk 

当時はまだスマホではなく、白黒の携帯を片手に職場を探した

僕の検索条件は3つ

・営業ではないこと

・休みがあること

・早く終わる事

とにかく営業はしたくなかった  ノルマがあって、成績が悪いと上司に怒られるなんて、たまったもんじゃない 

それまでも沢山の面接を受けてきたけど、職種が営業外だったのに「君は営業が向いているからやったらいいよ」なんて言われることもあったが、そんな時は間髪入れずに「無理です」と説得の隙を与えずに帰ってきた  

チョロのように毎日怒鳴られるのは嫌だ  僕は怒られたくないんだ(愛という名のもとにね)

仕事人間じゃないんだから早く帰りたいし、お金もいらないし、そんな若者だった  要はやる気のない男だ

探し始めてどれくらいだったろう  3週間くらいかな 白黒の画面にこんな仕事が上がってきた

・NPO

・職種 アテンド

・給与22万 

・9~18時 勤務

・週休2日

えっ なにこれ 公務員かなにか? もしかして最高じゃない?  いや絶対最高 これしかない  これを受けよう

ウキウキが止まらなかった

毎日、そこで働く姿の妄想をした  アテンドもNPOもいまいち理解できてなかったので、妄想の内容はあまりに貧相だったけど楽しかった

妄想をよりひろげるために、まずはNPOを調べてみた

特定非営利活動法人

非営利、営業とは真逆を意味する単語  最も惹かれる言葉だ

イメージとしては博物館の受付のひとみたいな  人が来ようが来まいが、給与は変わらない  毎日同じ 自分の努力と給与は関係がない  ※当時の考えなので、どこにも大変なことがあるということは理解してませんでした(博物館の方すみません)

勤務時間も休みもいいじゃないか  ここに行く 俺はここで働く 肉屋は辞める もう決めた

まずは電話だ

そのサイトはハローワークだった

電話をして、数ある募集案件から特定するために検索してもらう

すると「ヌノカワさん ここは難しいですよ もう21人くらい落ちていますので」 

「えっ」

続く

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